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2025年11月 8日 (土)

機械式自動巻腕時計の分解整備の目安

07__20251108202501 メーカーや時計店では表題の腕時計の分解整備(分解・清掃・組み付け・歩度調整)を5年サイクルで推奨しているが、数百万円以上の高級品ならいざ知らず、普段使いの10万円以下のものだと、おそらく十年以上もしくは数十年の間に、不具合が生じない限り分解整備に出すケースはまれのように思う。何せ、分解整備の費用が最低でも2~3万円が相場のようなので、これが大きなネックになっている。

ところで、腕時計の精度が低下し出す兆候のようなものを発見した。と言っても、専用の特殊な装置が必要なので、一般のユーザーが行えるわけではない。それは、[タイムグラファー]を用いることで、1ビート毎の間隔バランスが確認できる。トータルとしての日差も重要だが、テンプの往復回転の角度・タイミング・進み遅れのばらつき等を確認すれば、おおよそ分解整備が必要な時期がわかる。

後にわかったことだが、裏蓋を開けてこのテンプの安定度すなわり天輪の報復運動時の位置をつぶさに眺めていると、ビートバランスのズレが目視でもわかる。つまり、昔の時計店では分解清掃時期の必要姓を、裏蓋を開けた瞬間に判断できたのだろうと思う。その意味では、オープンハートタイプの機械式自動巻腕時計は、常に健康状態を確認できるということだ。

手持ちの4台の機械式自動巻腕時計のすべてをチェックしてみると、最初に入手した1970年製の[SEIKO 5 ACTUS 25石(6106-8660) 諏訪精工舎製]がやはり問題だ。日差+80秒を歩度調整して+20秒まで抑え込んだが、これ以上の精度を上げることが難しい。常時±10秒くらいのばらつきが発生しており、これこそが分解整備のサインのような気がするのは、他の3台と比べて著しくビートのばらつきが目立つ。

特に、ほぼ同じムーブメントを搭載している予備機の1974年製[SEIKO 5 ACTUS 25石(6106-7490) 諏訪精工舎製]のタイミングバランスは実に良い。日差も+15秒程度で未調整のままだ。無論、1972年製[SEIKO LORD MATIC Special(5206-6110 )]や新品購入の[CITIZEN AUTOMATIC オープンハート]の歩度バランスも全く問題ない。

クォーツ駆動と違って機械式自動巻の場合には、装着する際に時刻合わせをするのが常なので、日差が10秒であっても30秒であっても、現在では実用上は大した違いはない。しかし、1970年代では正確な時刻は毎回電話をかけて時報で確認するわけで、そのたびに10円の通話料がかかることを考えるとより正確な方が良いのは確かだ。すなわち、一般のロービートよりハイビート(8ビートや10ビート)の高級品にその意味がある。

何度も確認することだが、筆者は腕時計のコレクターではない。いわゆるブランドものの腕時計を所持するほど経済的余裕があるわけではなく、工業製品の原点とも言える腕時計の精巧さに魅入られてあれこれを眺めて装着し、時にはご機嫌直しに手入れを行っている単なる小物好きにすぎない。誰々の作よりも無名の工芸製品を好み、時代の流れを気にせず古いカメラレンズに共感して、30年以上[LC/80]の面倒を見ながらこの先で一生を終える予定だ。

2025.11.09
★ 時計店のまねごとをしてみる
ビートのばらつきが目立つ1970年製[SEIKO 5 ACTUS 25石(6106-8660) 諏訪精工舎製]だが、精度の劣化を放置していつかは訪れる時刻の狂いまで無策のまま過ごすのがどうも気になる。と言って、購入価格の4倍以上もかけて分解整備に出すのもどうかと思案するところなので、思い切って時計店のまねごとをしてみた。

要するに、もっとも動きの激しいテンプの回転部分およびガンギ車とアンクルの接触箇所の清掃と新鮮な注油を施せば、その他のバネ動力部分をそのままにしても、ある程度のビートバランスの回復が期待できるのではないかとの判断だ。予想は的中して、正常なビート間隔を確認できた。この状態から振り角誤差の収束と歩度調整を再度行って、自動巻き上げ機上での日差を+10秒まで追い込むことができた。

その後3日が経過してほぼ安定したようで、日差-5秒から+5秒の範囲内に落ち着いたところをみると、諏訪精工舎製の本来の性能に戻ったと思われる。おそらく同じ名称の「SEIKO 5 ACTUS」でも23石の亀戸精工舎とは、25石の違いだけではなく、これがキングセイコーを意識した諏訪精工舎製の精度の考え方なのかもしれない。

[SEIKO LORD MATIC Special(5206-6110 )]と2台を自動巻き上げ機にセットして24時間、この2台がほぼ同じ精度で運針しているのをみるのは感動ものだ。まあ、今回の緊急処置で数年から5年は精度を維持できると思うので、この間はすべての4台の機械式自動巻腕時計がいわゆる健全な状態で稼働していることになる。

ところで、タイムグラファーでの精度計測はおそらくこの先当分の間は行わないと思う。日差が分単位での誤差が生じない限り、日常活動下での日差を追求してもあまり意味がない気がするのと、ケース裏蓋の開け閉めの弊害の方が大きいように思うのは、顕微鏡観察で室内の空気中の浮遊チリの多さを知ったからだ。偶に行う双眼プリズム部分の内部清掃だが、その際にはマスクをしても呼吸すら止めるような清浄な一瞬で作業することの必要性を知ったからだ。

・・・つづく(もどる)

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