CITIZEN SEVEN STAR DELUXE:クリスタルセブンの面影
1960年代後半から1970年代にかけて筆者が高校生の頃、シチズン製腕時計と言えば[CRISTAL SEVEN]で、クリスタルガラス製のエッジカット風防の美しさへのあこがれは、あれ以来筆者の脳裏から消え去ることはない。
この歳になってヴィンテージ腕時計にこだわるその源流はこれにあると言っても過言ではないが、程度が良く適正な価格の[CRISTAL SEVEN]を見つけることが容易ではないのも事実だ。
視点を替えて同時期のもう一つのブランドである「SEVEN STAR」を気にかけていると、偶然にもクリスタル製のエッジカットガラス風防を備えた、[SEVEN STAR DELUXE]の出物を見つけた。SEIKO製品では高校生をターゲットにした[SEIKO 5 ACTUS]と社会人向けの[SEIKO ROADMATIC]に対抗するのがおそらく[CRISTAL SEVEN]と[SEVEN STAR]のような気がするのは、それぞれの後継がともにハイビート(28,800振動)の高級機をラインナップさせていたことからの推測だ。
本製品は1971年からの販売で18,000/21,600振動の5/6ビートモデルで、入手したのは低振動版の方になる。おそらく稼働時間は経過年数とは別物の保管品のような気がする。風防のクリスタルガラスのカットデザインは[CRISTAL SEVEN]と酷似しており、その面影を存分に感じ取れるところが良い。文字盤・裏蓋の「セブン」の数字をロゴ化しているあたりも紛らわしいほどだ。付属のステンレスハンドはバンビ製で腕周りが珍しくMax19cmなのでそのまま使用することにした。
この当時はまだ「サファイヤガラス」登場していなかったことから、最も透明度の高い風防はこのクリスタルガラスになる。この大胆なエッジカットが非常に印象的で、特に屋外で太陽光のスペクトル分解の虹色を発した時の美しさは格別だ。
このエッジデザインは当時の[SEIKO 5 ACTUS]のハードレックス風防とほぼ同じだが、光の屈折角は微妙に違うように思う。とにかく、気持ちだけはかつての憧れであった[CRISTAL SEVEN]を入手できた感動に浸っている。
一応点検の意味で裏蓋を開けて、ムーブメントを文字盤ごと外して清掃を行ったが、文字盤インデックスの外周がケースに別置きされた造形的な構造であることがわかった。不用意にこれまで外すとダイヤルが欠損しそうなので、ガラス風防のふところを入念にブローしておいた。
タイムグラファーによる精度確認と歩度調整だが、ビートエラーと歩度調整で日差+10秒まで追い込むことができたが、振れ角が若干狭くなっているような気がする。おそらく、ゼンマイ動力系の歯車の汚れが蓄積しているようだが、全巻で2日ほど駆動するのでしばらくは様子見というところだ。
2026.04.19
★ 姿勢差精度のばらつき
前回の歩度調整から2週間が経過して、平置き(時計本体は背面)と、日常活動の姿勢(文字盤が上か、6時方向が上)では大きなズレがでるようだ。そこで、これを基準に再調整を行うが平置きとは誤差のズレが100秒程度ある。姿勢差が大きいことはオーバーホールの必要性が懸念されるが、テンプ回りに注油を施してふたたび様子見というところだ。
★ 秒針ハック機能がない
故障ではなく、リューズを2段引いても秒針が停止しない。この頃のモデルにはこれのように秒針のハック機能がない機種があるらしい。もとより、時報に秒針を合わせるという行為は非日常だったのかもしれない。電話で時刻を確認するにも電話料金が発生するわけで、日差許容±45秒程度の精度であれば、これも致し方ないことか。しかし、着け心地というか、風防のクリスタルガラスの輝きと文字盤の反射の具合は、ほとんど「CRISTAL SEVEN」なのでそれはそれなりに満足している。
2026.04.27
★ 秒針を外してみる
秒針のハック機能がないと、秒単位の時刻合わせが事実上できない。唯一、ゼンマイがほどけて止まった時のみ秒針の時刻合わせができるという不便があるのだが、クォーツムーブメントへの切り替わる1971年の頃には、秒針の時刻合わせをそれほど重要視していなかったとすれば、時刻合わせは分針のみの目見当で行うのも現実的だ。
同じ頃のシチズン製レディース自動巻8ビート(28,800振動)も手元で確認すると、これも秒針ハック機能がない。ならば、秒針を外して2針にしておけばすっきりするかもと考えた。
2針で2週間ほど使用してみたが、初日の違和感を通り過ぎるとまんざらでもない。稼働していることの確認時期はすでに過ぎているので、秒針に対するその不安は全くない。現在は日差+15秒ほどだが、時刻合わせが以前ほど気にならなくなり、むしろ2針の良さを感じるまでになってきた。
ただし、タイムグラファーでこのムーブメントの日差特性を把握しているからであり、やはりこの種のメンズ時計の2針化は一般的な話ではない。ところが、しばらく2針で使用していたところ、1日・2日放置してしまうと、時計を手にとってぱっと見では動いているのか止まっているのかがわからない不自由がある。
2026.05.06
やはり3針に戻して、アバウトな分針だけの時刻合わせに納得した。このような秒針ハックのない、やや古めのヴィンテージ自動巻腕時計の場合、その年代の使い勝手に依るのが最も自然だということを再認識した。これより5・6年するとクォーツ式との競合の中で、機械式自動巻でも秒針ハック、ワンプッシュ秒針0時帰還機能など、時刻合わせに秒精度を気にする時代が訪れるようだ。
最後に、クリスタル風防ガラスのエッジ研磨加工の甘さを手磨きで修正してスペクトル色分解能を高めた。これで1970年代の強烈な感動をよりリアルに再現できたように思う。150°の範囲でエッジのスペクトル分解が見られるのは、シチズン製クリスタルガラスのみで、他の高級ガラス(ハードレックスやサファイヤガラス)では再現できないいわゆるヴィンテージシチズンの趣だ。
2026.06.30
★ 6ビートの「7200系キャリパー」
5ビート18,000/時の「SEVEN STAR DELUX」の精度は特に姿勢差が大きいのはムーブメントの劣化が主な原因だと思うが、ビートエラー値を常に0.5以下に維持するのが難しいのは、低振動の宿命のような気がする。
「SEVEN STAR DELUX」の後継機種になる[SEVEN STAR V2]になると、振動数は6ビート 21,600/時で日差精度も若干向上するように思う。今回、このムーブメントを入手したので文字版ごと入れ替えてみることにした。
初期のV2製品なのでハック機能は依然として搭載されていないが、歩度調整を済ませると、日差+8秒、ビートエラー0.3まで平置き精度を追い込むことができた。これで、他の自動巻腕時計とほとんど同等の性能になった。
振り角は200°オーバー程度で少し元気がないが、テンプの注油措置の結果を後日確認して、改善されているようであればこの先は当分安心できると思う。
つづく(もどる)
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