1972年製 シチズン コスモトロン(Cal.78XX 10振動)
機械式時計からクォーツ時計への移行途中、1966年から1972年の最終版までのリリースで国内では主にシチズンで販売された、電池を動力源にしてテンプ(左右に回転するリング)を電磁式に置き換えた時計が、通称[シチズン コスモトロン]としてこの時期に存在していた。時計精度は機械式並みだが、約二日で止まる自動巻と違って、1年間位はノンストップで動くものの、後のクォーツ時計に比べると消費電力の大きさと精度およびコストパフォーマンスの点で忘れられた製品だ。
発売当時の水銀電池は、現在では酸化銀電池になるようで、その規格はどうも「SR44SW(φ11.6×5.4)1.55V」になり、とんでもなく大きいことがわかる。しかも電池寿命が1年間程度なので、時計屋さん通いも頻繁になる困ったものだ。しかしながら機械式の心臓部であるテンプの動力が一定であり、高級機なみの「10振動(36,000vph)」ということなので、ある意味では機械式ムーブメントの最高峰(ロレックスやグランドセイコー等)の動きも楽しめる、複雑な心境になれるヴィンテージ製品だ。と思ったが、秒針の動きはテンプとは同期しておらず5振動のように見える。
一方で同じ機構の[SEIKO Elnix]は秒針も10振動で動くようだが、こちらの販売期間は極めて短かったこともあり、品数と信頼性・耐久性等の実積に乏しいような気がする。
ちなみに、手持ちの自動巻腕時計のほとんどは6振動で、[SEIKO ROADMATIC Special]と[Citizen CosmoStar V2 レディース]の2点のみ8振動のいわゆるハイビート仕様だが、ついにこれらを上回る10(5)振動を運がよければ眺められることになる。
これまでこの製品に二の足を踏んだのは、半世紀以上前の製品が適切なメンテナンスで正常駆動が維持されていたとしても、この先も健全な状態で駆動し続けられるような精度と堅牢性を備えているかどうかで、少なくともキングセイコーやグランドセイコーとは異質の構成である、トランジスタ等の旧式の電子部品が組み込まれたメカニズムの特異性は、現在ではほぼブラックボックスと言ってもよい。
そんなこんなで、これまではこの[コスモトロン]には手を出さないでいたのだが、駄目元を覚悟で電池切れと称するジャンク品を今回見つけた。本日は到着した製品に内蔵していたオリジナル電池の互換品を注文したところだが、運良く動き出せば儲けものだ。ムーブメントの別画像だが、クォーツ式のような緑の基盤が目につくと同時に、大きめのテンプが特徴的だ。当たり前だが自動巻と違って、ゼンマイからテンプまでの何段ものギア群が全くない。
歴代のコスモトロンのCalibre No.と振動数の関係は以下のとおりで、この10振動(36,000bhp)は最終版でしか実積がないというか、これで廃盤という劇的な終焉を迎える。
1966:Calibre 0801 18,000 bhp
1969:Calibre 0802 18,000 bhp
1969:Calibre 0840 21,600 bhp
1969:Calibre 0880 18,000 bhp
1969:Calibre 0820 21,600 bhp
1970:Calibre 4840 18,000 bhp
1972:Calibre 78XX 36,000 bhp
さて、入手した1972年製[CITIZEN COSMOTRON 7800-870018 TA]だが、ケースおよび文字盤のデザインはその当時の一般的な自動巻時計とかなり類似性がある。と言っても、自社製品のラインナップというより、推測ではあるがSEIKO製の具体的には[SEIKO 5]に酷似した印象を受ける。
裏蓋の開け方がわからなかったので、ベゼル側から傷ついた風防ガラスを取り外して、寸法計測に基づき純正のクリスタルガラス風防を探している。互換電池が到着して駆動確認がとれたら風防とバンドを注文するとして、ひとまずこの状態で作業が中断している。
2026.04.13
★ ムーブメントの取り外し方
交換用の電池が到着したので、どきどきもので装着してみたらあっさりと動き始めた。そこで、本格的な整備を開始することになり、何より先にムーブメントをケースから外して安全に保管する必要がある。
ところが本製品は裏蓋がないいわゆるワンピースケースタイプらしい。裏面には電池交換用の小さな窓蓋と歩度調整用のネジに届く緊急用ネジ蓋の二つが備わっている。従って、ムーブメントは写真にあるベゼルと風防を外した表側から取り出すようだが、巻き真を引き抜く際にロックを外す「オシドリ」が表面にはない。どうやら、オシドリに代わるレバーがすき間にあることを後日知って一安心だ。
初期の高級クォーツ時計にも見られるこの電池交換専用蓋は、だれでも安心して電池交換ができる点では時計屋さん通いを一掃した小窓で筆者の好みだ。ただし、歩度調整用のネジ穴は興味本位で開けないように特殊ネジでもよいかとも思う。
リューズ操作は押し込みでカレンダー送り、1段引きで長針合わせになっているが、1段引き操作が日常ではほぼ不要な、ソーラークォーツやクロノグラフのような、ゼロ秒時刻合わせ機構が備わっているので、このように強く引いてリューズを外す構造の合理性が納得できる。
この7800用の「Cal.7801A」ムーブメントはその次の機種からは通常の裏蓋式に改められたようだが、初期型にのみ見られるワンピースケースで巻真を抜く方法は、文字盤縁の4時付近にあるレバーを外側へ押しやるようにすればロックが外れる。このことがわかるまで、関連する時計整備のブログを4~5日検索して、それが確認できたときの喜びは格別だった。
今後の予定は以下のとおり。
(注文パーツ)
・風防クリスタルガラス注文(純正オリジナル)
・曜日車(スレが著しく、おそらく軸回り部分にひずみが生じているようだ)
・メタルバンド注文
(整備予定)
・ムーブメント文字盤取り外し
・曜日車の交換
・ベゼルのキズ補修、風防クリスタルガラス交換
・ケースのキズ補修と洗浄
・ムーブメントの組み付け
・タイムグラファーによる歩度調整
・メタルバンドの取付
電池交換時の不思議だが、本体に残っていた内部電池は「ユニオンカーバイド 313」で、かつてソニーが提携していた頃のメーカー製品のようだ。製造年が1983~1984年頃で、それ以降は国内品番の「SR44SW」が一般に流通していたらしい。ということは、本製品は1972年の発売から12年~13年間稼働してから以降、40年間ほど電池切れのまま保管されていたのか。ちなみに、古い内部電池をつぶさに確認してみたが、残電圧は140mVで液漏れ等は全く認められないのも不思議だ。
36,000振動ハイビートは通常の自動巻においては1960年代にはセイコー・シチズンの両者に見受けられたようだ。ただし、高級機だけにメンテナンス必須のようで、一般の21,600振動に比べてテンプ回りの劣化が懸念されていたようだ。実際、現存する36,000振動のヴィンテージものは1970年代のものが大半で、そういう意味でもこの時期が各種ムーブメントの完成域オンパレードのように思う。
そして爆発的なクォーツ時計への転換の時代がやってくるのもの1970年台であり、本製品の「CITIZEN COSMOTRON」はそういう過渡期の銘品ではないかという気がするので、是非とも予定の整備を終えて使ってみたいものだ。
2026.04.22
★ 風防ガラスと曜日車が届く
風防ガラスは外径とエッジの厚みを基準にして代替え品を注文した。届いた商品を確認すると、オリジナルはフラットタイプだったが、今度はあらかじめわかっていたがダブル曲面仕様になっている。型番の適合メモから、「レオパード(レオパール)」用の純正品のようだ。品質レベルからしてオリジナルより1ランク上なので問題ない製品だと判断した。
ダブル曲面はガラスの反射をマイルドに和らげる実に高級感のある風防に仕上げている、ヴィンテージものならではの特徴だ。セイコー製に比べて安価で入手できたのもうれしい。
先月に入手した[CITIZEN SEVEN STAR DELUXE]のクリスタル風防によく似ているが、エッジがやや立ち気味で、曲面仕上げの研磨精度はこちらの方が良いようで、光学レンズの雰囲気がある。
曜日車は文字盤の取り外しを落ち着いた時に行うとして、今週は何かと忙しいのでの週末から来週、もしくは連休休みの頃に作業を行う予定だ。替えのバンドも[バンビ製]のものが昨日到着しており、本日時点ですべての準備が整った。
★ バンビ製汎用メタルバンド
本体幅が20mmでラグ幅が18mmのどちらかと言うとビンテージ風の汎用メタルバンドだが、ワンプッシュの折りたたみ式の定番ものだ。コマの入れ替えもできるので、バックル位置を正確に調整することができて、長さの微調整もバックルピンで3mm+3mmの6mmまで可能だ。比較的軽量でメタルにしては装着感が良い。
今回もこれを使用することにしたが、すでに生産は終了しているので時計店の在庫を探して注文するしかないのだがこれで4本目になるのは、とにかく定価が安い(¥3,630)ので販売価格はたいてい2千円台になっているのが良い。
決して高級感はないが、造りの品質が高いので何より安心して使用できる。そして日常使いとしてはこのワンプッシュ式が最も合理的な気がする。両開き折れ式のスタイリッシュなメタルバンドもあるが、ほぼ無意識で付け外しができるのがこのタイプだと思う。
★ 5月の連休中には組立・稼働の目処が立った
針と文字盤を外せば曜日車の交換は大した手間はかからないと思うが、風防ガラスを交換するので、針の干渉の有無を確認しながら組立は慎重を要すると思う。
そうなれば、いつものことながらムーブメント[Calibre 7801A]の予備の確保だ。この10振動初期型は市場での品数が少ない。したがって、動作確認品となるとさらにハードルが高くなる。おそらく何個かの個体を入手して自らで動作確認をする必要がある。
とにかくムーブメントが健在であればケースや風防ガラスはどうでも良い。そのように気長に出物を探していたところ、まず一つ目のものがみつかった。
「7800-870018 TA」の予備機として見つかったのは、「7800-870026 TA」で、ベゼル回りのケースのデザインが少しだけ異なる。内部のムーブメントはおそらく同じものとの推測で入手したが、例によって稼働の確認がとれていないリスクのある商品だ。
今月中には現物が届くと思うが、運悪く完全な不動故障品の場合にはあきらめるしかないが、その程度の価格のものなので、パーツ取りとして保管しておく。
★ 7800-870026 TA 到着
本日予備機が届いた。開封して電池蓋を開けて早々に稼働状況を確認したところあっさりと動いた。前回の「7800-870018 TA」もそうだが、このワンピースケースは一般的に予備知識と経験がなければムーブメントを確認するところまでの蓋開けができない。
極端に言えば電池蓋以外の蓋開けはよほどの理由がない限り手を出さないと思うので、その意味ではいわゆる「いじられている」可能性が低い。この機種に関して不動状態とは、落下や水没の痕跡がない限り電池切れで放置されているケースがほとんどの気がする。今回はたまたま2個の個体がその状態のようで、ともに数千円で入手できたことは非常にありがたく、オリジナルのまま保管しておく。
2026.05.01
★ Cosmotron 7800-870018 TA 組立完了
曜日車の交換は針軸のC型留めワッシャーを外す必要があり、駆動用のギアをはめ込むのに少しだけ手間取った。曜日車のギア精度の関係かもしれないが、はまるところとそうでないところがある。この微妙なフィット感を探すことで日付け車と水平位置がぴったりと合う。もとの曜日車はこの完璧なギアのかみ合わせ位置を探しきれておらず、そのために文字盤に接触して円周状のスレが発生していた。
最後に日差精度を確認したところ、姿勢差を考慮していも「+5秒から+15秒程度」に納まっているので、電磁テンプの半機械式駆動としてはまずまずの性能だと思う。しかし、何よりも、10ビートの36,000振動をタイムグラファーではじめて確認したときの感動は強烈だった。とにかく、8ビートの28,800振動とは全く違うことを知った次第だ。
2026.05.10
★ Cosmotron 7804 4-790138Y
「コスモトロン」に関しては、発表まもなく各社のクォーツ駆動の機種との競合でその影が薄くなり、7800シリーズが発売開始から5年程度で市場からその姿を消したような気がする。その意味では現在でも知名度は低く、今のところ実売価格は外観の程度を気にしなければ、交換用風防ガラス程度で入手できる。
ただし、市場から在庫数が減少すれば不合理な価格での取引が行われる時期がくるような気もする。そこで、最終版の7804ムーブメントの稼働品を今のうちに簡単な手入れを施して手元に置いておくことにした。
ムーブメントと文字盤は微細な埃や汚れを落とし、ケースと裏蓋のスレを修正して、風防はレオパール用の新品クリスタルガラスに入れ替えてパッキン類も交換しておいた。すべてのパーツを組み上げてもよいが、このまま別途ケースに封印しておいてもよいかとも思う。
筆者の心の中ではこの「コスモトロン」は腕時計の歴史の中でいわゆる「秀逸機」と呼ぶにふさわしい機種だと思っているが、同時代の自動巻や手巻きおよびクォーツ駆動のビンテージ製品がその後半世紀にわたり健在に稼働していることを考えると、同様の耐久性があったのかどうかを検証する手立てがない。
★ レオパール用風防は光学レンズ
ムーブメント・文字盤を組み込む前のケースでレオパール用の風防を通して背面を透過してみると、ダブル曲面仕上げのクリスタルガラスは間違いなく凹レンズの形状をしていることがわかった。その曲面精度は光学レンズの仕上げに相当するもので、かなり本格的なレンズ研磨の作業を経ていることが改めて確認できた。
撮影のために仮にバンドを装着してみたら、風防ガラスを通しての画像の具合で凹レンズの光学特性がよくわかる。これほどまでに凹レンズの様相を呈していることに気付かなかったのは、いままでは文字盤・ミーブメントを間を置かずに装着してしまうためだ。それにしても、エッジカット部分のスペクトル分解が美しい。
保管用の「Cosmotron 7804 4-790138Y 」もムーブメントに埃が侵入しないように、すべてのパーツを仮組しておくことにした。そこでもう一つわかったことだが、実際にはフラットな円盤の文字盤がわずかに曲面に湾曲しているように見えるのは、この凹レンズ状のクリスタルガラスのためのようだ。
これは[Seven Star Delux]のダブル曲面ガラスにも言えることで、今改めてその文字盤を眺めてみると確かに湾曲している。ただし、同じダブル曲面ガラスでも[SEIKO 5 ACTUS]に装着されているキングセイコー用の風防ガラスは、文字盤が完全にフラットに見える。
歩度調整も裏蓋を開けて行う一般的な構造なので、こちらの方がメンテナンス性は優れているように思えるのは、おそらく7802、7803を経て7804までこのケース構造は一貫していることでわかる。
2026.05.17
★ テンプ振動と秒針運針の関係
テンプの振動(鼓動)はタイムグラファーのマイクで拾われて、そのまま振動数として表記される。[CITIZEN Cosmotron]の場合には、36,000vph表記になっているが、文字盤上の秒針の動きはその1/2くらいの18,000vphの5振動だ。
つまり、時計の見た目では10振動のスイープ運針になっていないことを、実際に製品を手にしてはじめて知った。まあ、世間の情報ではこのあたりのことがあまり話題になっていないようだ。
ところが、[SEIKO ELNIX]の場合には、タイムグラファーで36,000vph表記で示されて、文字盤上の秒針の動きも36,000vphの10振動になっているらしい。(どうも正確な情報を得ることができていない)
1970年代はじめの同時期に発売されたこれら2つの電磁テンプ方式の10振動ムーブメントが、見た目で大きく異なることの理由がどうしてもわからない。そして、どちらかと言うとよりメジャーな[CITIZEN Cosmotron]の方が控えめな秒針の運針機構で押し通したことがまた不思議な気がする。
この疑問に対する筆者の推測だが、電池の寿命というか消費電力の問題と関連性があるような気がする。どちらかと言うと比較的電池の持ちが良いとされる[CITIZEN Cosmotron]でさえも約1年程度で電池交換の時期が訪れるらしい。
したがって、もしかして[SEIKO ELNIX]の方は秒針の運針に要する電力が大きく、半年くらいしか電池が持たなかったのかもしれない。それであれば、[CITIZEN Cosmotron]が見た目の振動数をテンプの1/2に抑えたことの意味がわかる。
つまり、テンプの引きつけ回転は電磁力で行い、解放回転はヒゲゼンマイで行うという組み合わせなので、その両方の動きを秒針に伝えると余計な電力消費が発生するということかもしれない。
このあたりのことを記述している情報がありそうでないのは、ほとんどの記事が書き手の実所有を伴わない想像で記述した内容のためか、これら2つのムーブメント違いがそれほど興味を持たれないためか、それを解決する最後の手段は筆者が直接確認する以外になさそうだ。そこで、新品の風防ガラスでケースやムーブメントの程度の良い[SEIKO ELNIX 0703-7020]をやっとのことで探し出してきた。
付属のバンドは使いものにならないが、電池も交換されているので19mmバンドを準備すればすぐにでも使用できる。ケースと文字盤の雰囲気は1970年代の「SEIKO 5 ACTUS」の趣があり筆者好みのデザインだ。風防ガラスのステンレス縁が大きく、外側のベゼルと2重構造のように見える不可思議さは、何か他のモデルとの部品共用を図った結果かもしれない。いずれにしても外観は重厚感のある雰囲気だ。商品を見てからベルトを注文するとして、今は到着前の商品画像で色々と想像しているところだ。
2026.05.19
★ [SEIKO ELNIX 0703-7020]到着確認
いずれ本製品の記事を詳しく掲載しようと思うが、本日到着した時点で最初に確認したかったこと、即ち秒針の運針刻みだがムーブメントの28,800vphに連動した8振動で稼働している。ゼンマイ式のHi-Beat 8振動と違って確かにエネルギーを消費している印象を受ける。
風防ガラスのステンレス枠に見えた部分はガラスのエッジ部分で、ステンレス枠はベゼルの内側に細い二重線になっている部分だった、これはまさに[SEIKO 5 ACTUS]の風防ガラスと同じで、ケースの両サイドの曲線仕上げは「SEIKO LORDMATIC Special]によく似ている。
★ 実体顕微鏡の功罪
仕事場の棚には整備済みの実体顕微鏡が3台ある。腕時計の観察に適した小型の2台のうち、ニコン製の[SMZ-10(ガリレオ 平行光路型)]用いて、文字盤のチェックしてみたが、目視では確認できない埃が残っている。おそらく風防ガラスの交換の際に混入したものと思われるが、改めて肉眼で確認してもまったくわからない程度のものだ。
この埃は必ず取り除ける類いのもので、ムーブメントを外せば簡単に終わる。しかしそうなるとケースの内部洗浄のためにベゼルを外してゴムパッキンも確認しておく必要がある。こうなるとケースの曇りやスレも手入れすることができて、納得できる清掃を実施することができそうだ。そこで早々にそれぞれのパーツを取り出してみて驚いた。
・裏蓋パッキンは交換されておらず古いまま(グリスも塗られた気配がない)
・ベゼルパッキンは新品が使用されているようだ
・ケースの縁(裏蓋かかり、ベゼルかかり、ガラスかかり)の固着汚れが清掃されていない
ベゼルとガラスの両方を固定する太めの純正ゴムパッキンは構造的には防水性能が優れるようだが、そのパッキンを受ける側に固着汚れが残ったままというのは、とても時計整備士の仕事とは思えない。たぶん安易に手間を省いたようだが、確かにこれをきれいに除去してステンレス地肌を出すのは根気のいる仕事だ。
ということで、すべてのパーツの清掃が終わってふたたび組み立てるところだが、ことの発端が文字盤の埃を実体顕微鏡で見つけたことによるもので、以前のようにルーペで簡単に確認していた頃であれば何も気にしなかったわけだ。
しかし、それは時計を扱う人をある程度信頼していたからで、今回のような筆者の感覚ではずさんとも思えるような仕事ぶりを想定していなかったためだ。
ちなみに、2020年までの電池交換の履歴が時計屋さんのメモで裏蓋に記されていたので、今回のことはその後に手渡った先の販売者の仕業だと考えられる。画像をみてわかるように、内蔵ボタン電池の大きさが目立つのはクォーツ駆動と大きく違うところだ。
2026.05.23
★ [SEIKO ELNIX 0703-7020]組立完了
今回の組立は、エアコンを止めて部屋の空気の流れを一時的に停止させた状態で、さながら顕微鏡レンズの組み付けのような慎重さで行った。文字盤が濃紺なのでわずかな埃でも目につくことからの配慮だが、一番の緊張はベゼルの圧入時にガラスを割らないかと心配しながら圧入機に力を入れる瞬間だ。「パチッ」とはめ込まれた瞬間には毎回ほっとする。
シチズン製の[Cosmotron]と違って、こちらは秒針がテンプの8振動と同期しているので、自動巻[LORDMATIC Special]と同じ運針状態だ。先の画像でもわかるように、文字盤の刻みもそれらしい雰囲気があり、高性能さがにじみ出ている。
文字盤に合わせて同色の革製バンドを探してきた。さすがに純正品やバンビ製ではこの色の製品は見当たらず、海外ものを試すことになるが、手元で確認したところ問題はないようだ。
仕上がりを眺めてみるとやはり[SEIKO 5 ACTUS]と[SEIKO LOADMATIC]のデザイン要素の影響を強く受けている。そういう意味ではこの両方の個性の完成形といってもよいバランスのとれたデザインだと思う。
それは[Cosmotron]についても、[CITIZEN REOPARD]の最終形としての安定度を感じるが、この2つはケースの大きさに微妙な差があることもわかった。当然ながら文字盤の大きさもそれに対応しているのだが、いわゆるそれぞれのメーカーコンセプトのようなものの気がする。
SEIKO ELNIX 横幅:37.3mm
CITIZEN COSMOTRON 横幅:38.4mm
このわずか1.1mmの差が腕に付けた際には明らかにわかるのがおもしろい。
2026.05.31
★ 予備の「SEIKO ELNIX」 ムーブメント
同じ型番(0703-7020)の予備品を探してきた。不動になってから10年以上が経過しているらしいので、極めてリスクの高いいわゆるジャンク品になる。
一般的にジャンク品と称するものの中には、パーツの欠品やすり替えなどの悪意のある品もあるので、筆者は商品の隅々まで確認できるもの以外はこれらにあまり手を出さない。
今回は不動から10年間以上の放置という情報を信じて交換バンドの価格程度で入手してみた。さて、商品が到着した本日、早々に裏蓋を開けて内部の状態確認と電池の交換を試みることにした。
問題点の懸念が的中した。内部の電池が残置されたままで(-)側下面縁がかなり腐食していた。底面は酸化物の粉が吹き出す状態だが、電池ホルダーの接点はまだ無事だった。ホルダー内に確認できる電池の酸化物を入念に除去して、新しい電池で動作の確認をしたところ、瞬時に力強く動き出したのでひと安心だ。
残置されていたボタン電池は、Made in USA の「水銀電池354」なので、これが最後に入手できたのは、市場在庫としても2008年頃までなので、不動から最低でも17年が経過している勘定になる。17年経過したボタン電池としては酸化の損傷は小さい方だと思う。
蓋の開け具合の固着程度からしても、17年程度の放置は妥当な感じがする。ケースとベゼルも目立つような打痕は見当たらないので、風防ガラスの出物や交換パッキンが入手できればもう一台組み立てても良いが、ひとまず写真の状態でケースに密閉保管しておく。同型番で同程度のムーブメントが準備できたので、このままでも十分に予備機となる。
2026.06.11
★ 予備の「SEIKO ELNIX」の風防ガラスを入手
純正互換品の表題ムーブメントの風防ガラスを見つけた。「ヨシダ製」なので互換品とは言え純正品と同等品質だ。ELNIX用はクリスタルガラス縁にステンレスリングのツバが付いた構造で、ケースにパッキンを介してはめ込むようになっているので脱着の失敗がない。
「5 ACUTUSやLOADMATIC」も同じ構造で、1台目の純正品と形状寸法が同じなので、何処が互換品なのかがよくわからない。おそらく包装袋の違いだけだと思う。
2026.06.16
★ ムーブメントフォルダー(置き台)
レディース用のムーブメントを固定するための締め付け式「固定台」も良いが、文字盤の大きさにより締め付けが不都合な寸法のムーブメントの場合、安全に据え付けられる置き台を購入した。そして、ムーブメントによっては、文字盤を下側にして置くことが出来ればなお作業性がよくなるとの期待もある。
・・・つづく(もどる)
« Citizen CosmoStar V2 完成 | トップページ | LIGE(西の大陸国メーカー)機械式腕時計 »
「つぶやき」カテゴリの記事
- 水難事故の背景(2026.09.22)
- 自治会掲示板の新設(2026.09.01)
- 腕時計ケースのポリッシュの是非(備忘録)(2026.08.30)
- 二重構造冷水ポット(2026.08.04)
- アジアの道路網規模(2026.07.10)
« Citizen CosmoStar V2 完成 | トップページ | LIGE(西の大陸国メーカー)機械式腕時計 »

コメント