CITIZEN LEOPARD 4-770153 Y(28,800bhp)
1970年代から80年代のビンテージもの腕時計は、風防ガラスが交換されているか交換することを前提にして、それが市場で入手出来るかどうかを含めて本体の時計購入を決断することにしている。
ところが、今回の場合は交換されていないがほぼ無傷で、しかもケース・バンドもほとんどキズが見当たらない、いわゆる使用感のない「展示在庫品」のような商品を購入してみた。もっとも、筆者の単なる思い込みかもしれないのは、商品説明にはそのようなことが一切記載されていないからだ。
百歩譲って金融保管品の出物(質草)ということで、詳しい説明がなかったのかもしれないが、それならば現状で稼働しているのも妙な話だ。まあ、すべては商品が届いてベルト弓カン部のケースのスレを確認したり、裏蓋を開けてパッキン外側や電池を確認すれば判明することなので、来週にはその結果を報告できると思う。
★ CITIZEN LEOPARD の購入動機
もとより、自動巻ハイビートの28,800bhp の製品は、手元で[SEIKO LOADMATIC Special]が健在であるが、1970年代はレディース製品を含めて、28,800bhp製品の全盛期だった気がするのと、さらにそれらの頂点に君臨するのが「KING SEIKO」や「GRAND SEIKO」の36,000bhpシリーズだったと記憶する。
ところが、シチズン製においては「LEOPARD」シリーズの中に36,000bhpの製品ラインナップが揃えられていたものの、その後のハイビートもしくはスーパービートの評価としては、圧倒的にセイコー製の方がいわゆるブランド力を強固なものにしてしまった。そのブランド力こそが、今日のメーカー序列の優勢性を決定付けているわけだ。
そのように考えると、ハイビート製品で比較的コストパフォーマンスに優れるのは、28,800bhp製品ということかもしれないし、実際のところ機械パーツへの負荷を考慮すると、36,000bhp製品には想像以上の精度管理と適切はメンテナンスが必須とも思えるふしがある。そこで、1980年代からは36,000bhp市場はセイコー製の独壇場になったのかもしれない。
1970年代のシチズン製36,000bhp製品のもう一つの機種に、電磁テンプ式の「CITIZEN COSMOTRON」の後期版があるが、テンプの動きは36,000bhpだが秒針の運針は18,000bhpに間引きされていることと、その対抗馬である「SEIKO ELNIX」は28,800bhpであったことを考え合わせると、どうも36,000bhpの秒針運針は、それなりの耐久性面でのリスクを帯びていた可能性がある。
世界の名だたる36,000bhp高級自動巻腕時計を追い求めるのは筆者の望むところではないでの、ビンテージものの哀愁とコストパフォーマンスを考慮した場合、どうしても手元に置いておきたかったもう一つが、[CITIZEN 28800 LEOPARD ]というわけだ。ちなみに、本製品はシリアル番号から推察すると1971年製と思われるが、その翌年の[COSMOTRON 7800]と風防ガラスが酷似している。
2026.06.08
★ 商品到着後の事実に驚愕
1971年製の製造から55年が経過したヴィンテージ時計の本物には違いない。しかし、稼働品だが「不良品」だった。まあ、これを稼働品という説明で販売することの是非にも多少の疑問はあるが、ある意味で納得できる結果だと心を落ち着かせている。
・巻真を引いての時刻合わせが出来ない(空回りする)
・自動巻は正常、手巻きは機能そのものの有無が不明
・駆動精度は正常
・カレンダーのプッシュ切り替え操作も正常
・完全な未使用品で、ベルト弓カン部の金属スレがまったくない
・裏蓋、ケース、ベゼル、風防ガラスのすべての外装が無傷
・バンドはフルコマで20cm
・裏蓋が完全に閉められておらず、内部ムーブメントおよびパッキンに汚れ・埃がまったくない
この時代に初期不良品はないと思うので、カレンダー合わせの操作を誤って、長針歯車に関連する箇所が欠けているか欠損しているような気がする。時計店がそのことを確認して、裏蓋をわざと完全に閉めないまま保管されていた製品というのが真相のようだ。初期不良であればメーカーへ返却されているはずで、おそらく販売したお客さんの誤操作で戻ってきたのかとも思ったが、顕微鏡で見てもバンド金具のスレがないことから、50年前の展示期間中の事故品という可能性が高い。さてどうするか。
★ 程度の良いムーブメントを探す
巻真付近の歯車交換で直ると思うが、筆者がその技量を身につける頃までこの個体は保管しておくとして、程度の良い LEOPARD 7700シリーズのムーブメントを探してくれば、この新品のケース・風防ガラスに格納できる。できるだけ稼働年月の少なそうなムーブメントを入手したいものだ。その見極めは、ケースのスレが少なく打痕が多く、風防ガラスのキズが多い出物を探せば良い。いわゆる腕時計の扱いが下手なユーザーが、飽きて放置していたような、極めて手入れの悪いものを探すのが良い。文字盤と鍍金ロゴおよび針の反射程度に問題がなければ稼働年月が浅い。
★ シルバー文字盤のムーブメントに交換
前述のようなコストパフォーマンスに優れる代わりのムーブメントを探してきた。おそらく、工場出荷から一度も裏蓋が開けられていないと思われる、これまでの経験で最も硬い裏蓋を無事に開けることができた。
当然ながらムーブメントも文字盤も実にきれいだ。取り出した文字盤を実体顕微鏡でさらに塵や汚れの有無を確認して、今回は文字盤および針ごと入れ替えることにした。文字盤の焼けがほとんど感じられないのが稼働年月の少なさを示している。
ムーブメントの入れ替えは一瞬で終了したが、再駆動してからの稼働日数がまだ浅いので、この先で何か不都合の有無を確認する必要がある。従って歩度調整は試運転が終わってから行うことにする。秒針の動きは[SEIKO LOADMATIC Sprcial]の28,800bhpとまったく同じだが、文字盤の雰囲気は[SEIKO 5 ACTUS]に酷似している。
見た目だけの秒針の動きが28,800bhpの腕時計は、[SEIKO ELNIX]を含めて3本と、細君の自動巻が2本の合計5本になる。クォーツ式を除く機械式・電磁式の11本のうち、5本がこのハイビートという勘定になる。そして10本が歩度調整が可能なテンプを備えている。
この時期のフェイスデザインは「SEIKO」と「CITIZEN」は競うように同じ雰囲気を意識しているのが興味深い。まったく別路線のデザインで独占的に販売するというより、同じ雰囲気で顧客数を分かち合うというようにみえてくる。おそらく、わずかな価格差でシェアーを2分していたのだろう。
ちなみに、キャメル色の革バンドは最近買い置きしていたものだが、2015年、いまから11年前に履きつぶした「革製ブーツ」の色を思い出して、すでにもう一本の[CASIO MOON PHASE]も交換している。
時計バンドではあまり一般的ではないカラーなので品数は少ないが、決して高価ではないのが救いだ。キャメル=らくだ色と翻訳すると、どうしても「らくだ色の股引」を思い出すのが筆者の年代だが、実際にはこのブーツや時計バンドよりももっと薄い色合いのようだが、一般には「キャメル」で通じるようだ。
2026.06.18
★ LEOPARD の予備機
程度のよい「LEOPARD」はこの先で品数は間違いなく少なくなる。特に、文字盤の劣化は手の施しようがないので、そのような個体は市場から姿を消すのが十分に予想できる。自動巻の場合には酷使せずに半分保管状態で維持すれば、思い出した時に振れば稼働するとは、馴染みの時計店の店主の話しだ。とは言え、メカニカル部品の経年劣化は間違いなく進行するわけで、いつものようにお気に入りは「予備」を備えたいところだ。
同機種のムーブメントのみ健在であればそれだけを取り出して保管しておこうと思い、外見はかなり痛んでいるように見えるが、内部をいわゆるいじられていない、ただ古くて手入れの悪いだけの商品を見つけてきた。1973年製の「SNOW 文字盤」が気になってややリスクを伴うが価格で割り切って購入してみた。
手元に商品が届いて確認したところ、ムーブメントは問題なく初期の目的は達成できたものの、気になる文字盤は風防ガラスを外すと日焼けやシミもなく健全だったのは極めて幸運だった。どうも文字盤が色あせたように見える原因は風防ガラスにあったようで、ガラスそのものの劣化と接着剤の変質のようだった。
風防ガラスが接着タイプなのはレディースでまれに見かけるが、メンズでこの年式でははじめてでなお若干の疑問も残る。時計店の判断でパッキンなしの風防ガラスを装着した可能性もある。ガラス径はφ29.45mmで、どちらかというとSEIKO製のガラス寸法にはこのサイズがよくある。新品時の風防ガラス仕様がわからないので、正規品がみつかるまで、この寸法の手持ちSEIKO製在庫品でまかなうことにした。
今回使用する接着剤は、経年劣化せず透明感の優れるジュエリー用接着剤の「B7000」で、硬化しても硬質ゴムのような弾力がありきれいに剥がすことができるので、パッキン代わりとして最適だと思う。ちなみに裏蓋とベゼルにはパッキンが装着されている。
バンドは販売者が好意的に新品を付けてくれていたが、これは取り置きして最近気に入っているキャメルのDバックル仕様に交換する。ケースや裏蓋およびベゼルに打痕はなく比較的丁寧に使用されていたか、風防ガラスの接着剤の変質でみすぼらしくなって放置されれいたのだと思う。
風防ガラスを交換すると、「SNOW 文字盤」の乱反射のせいか、光の透過性能が良くなったように映る。この文字盤デザイン手法はSEIKO製の文字盤によくあるが、CITIZEN製では比較的めずらしい。
風防ガラスの交換に際して、文字盤に目立つ汚れは見当たらなかったが、念のために「純水」で丁寧に拭き掃除を行っている。ムーブメントの交換品はこの先も入手が可能だが、このような文字盤は大切にしておこうと思う。
2026.06.22
★ そろそろ歩度調整をしてみる
LEOPARDの自動巻機構も問題ないようなので、最終歩度調整をしてみようかと思いタイムグラファーを準備してみた。ところがビートエラーがどうしても収束せず何かがおかしい。数十分の試行錯誤の結果、緩急針とヒゲ持ちの上下が逆なのがわかった。
これは想像だが緩急針の微動ネジがあるタイプなのだが、これを使用せずにオーソドックスで面倒な直接操作を行ったことで、この上下の逆に気が付かなかった。結果として満足できる精度まで追い込むことができて一安心だが、一時はどうなることかとやきもきしていた。
タイムグラファー表示: +6s/d 251° 0.4ms 28800
この年式にしては振れ角が元気で、この先もまだまだ大丈夫だと思う。このようにムーブメントの反応を確認すると、まるで生き物を手なずけたような感動があるのが不思議だ。
★ 腕時計の整備用工具の準備費用
バンドや電池の交換程度であればおまけの工具で対応も可能で、これと言って整備用工具の準備費用はかからない。しかし、風防ガラスの交換やムーブメント入れ替えおよび文字盤交換までの整備になると、特に機械式の場合には最終チェックのためにどうしても「タイムグラファー」が必須になる。
歩度調整だけを行ってくれる馴染みの街の時計屋さんがあれば別だが、大抵の時計店は歩度調整だけの整備は一般的には受け付けてくれない。即ち、ムーブメントの分解・交換整備を行った最終確認作業として、タイムグラファーでのチェックと歩度調整がセットになっているようだ。確かにムーブメントが不全な状態で歩度調整だけを行っても意味がないのもわかるが、昔は健全性の確認くらいのチェックは販売店で気軽に行ってくれたものだ。
一方で、タイムグラファーを購入するとなれば、最低でも2~3万円程度の費用が必要なのと、これでムーブメントの不全が確認されてもそれだけのことで、調整のノウハウはそれなりの経験が必要であることを考え合わせると、あれば便利な整備用工具とは言えない。
ただし、歩度測定器は、1960年以前では街の時計店では購入できない高価なもので、1970年代になってようやく国産普及品が出回ったらしい。現在市販されている機械式ムーブメントのタイムグラファーは、おそらく20年前ころから出始めた海外製品で、いわゆる国内の測定機器メーカーの商品ではないが、実質的には何ら問題がないので、現在ではこのシリーズは一流時計店でも併用しているらしい。
では、1960年以前の街の時計店はどのようにして歩度調整を行っていたのかを、我が街の時計店の主人との雑談でおしえてもらったことがある。まず駆動不全はテンプ根元のガンギ歯車の「弾き音」の「音色」のばらつきで、ビートエラーは先の音色ばらつきとテンプの回転運動の凝視で、緩急調整はひたすら放置後の秒針位置でそれぞれ確認していたとのこと。
従って、これらの作業を収束させるには4~5日から1週間ほど何度も確認して、のんびりとした仕事だったらしい。それがいわゆる時計技能士試験制度が整った1960年代以降では、測定器の普及で十分以内に歩度調整作業を完了させる技術が必須になったらしい。
2026.07.06
★ 4本自動巻き上げ機
デイデイト自動巻腕時計は自動巻き上げ機にセットしておくと思い立った時に装着しやすい。現在使用している「自動巻き上げ機」は数十年前の絶版製品だが、造りが良いのと過度な巻き上げを行わない設定が4種類用意されているもので、ひとえに自動巻腕時計に優しいところが気に入っている。
回転軸の「ホルダー」を取り替えることで、1台で1本巻から3本巻まで対応しているが、実際には3本巻はモーターへの負荷が大きく動きに無理がある。さらに、2本フォルダーの片方が空の場合にはバランスが悪く、「ダミーの重り」を装着する配慮が必要だ。
それでもこの製品を2台並べて常時最大4本を巻き上げられる環境で自動巻腕時計のご機嫌伺いを行っている状態だ。
現状は細君の自動巻2本を含めて、休止状態のムーブメントがあと4本あるので、これらをまとめて収納できるケースを物色していたところ、偶然に掘り出し物を見つけた。
巻き上げ能力が現在のものより大きいので、たまには電源を落とす必要もありそうだが、自動巻腕時計のすべてをこのケースに収納できて嵩張らないのが良い。さて、実際の性能・機能はどうか、今週中には製品が届くと思う。
・・・つづく(もどる)
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