1979年製 SEIKO KING QUARTZ 9923-7020
自動巻KING & GRAND SEIKOには手を出さないことにしているが、筆者の好みの文字盤「SNOW」と、並外れた精度を持つ「TWIN QUARTZ」の年差±20秒という仕様の「KING QUARTZ」に魅了されて購入した次第だ。
ちなみに、さらに上位機種の「GRAND QUARTZ TWIN」は年差±10ということで、精度だけを追求すれば電波時計の合理性とコストパフォーマンスを考えると、「KING QUARTZ」が妥当なところかと思う。
「KING QUARTZ 9923-7020」と手元にある「Dolce」とはカタログ発表としてはともに1980年で、その掲載価格は前者が5万円で、後者が9万円になっている。ちなみに、「GRAND QUARTZ TWIN」と「Dolce」が同価格帯だっと記憶がある。1980年代のクォーツ時計の価値は単に精度を追い求めるよりも、よりデザイン性や外装素材に魅力の重点が置かれていたようだ。
実際、当時の「GRAND QUARTZ TWIN」を方を購入していたとしても、クリアハードレックスのガラスコーティングは目に見えてキズが発生していただろうし、ステンレスケースも同様のことが言える。その点では、現在も無傷の超硬合金+サファイヤクリスタルの「Dolce」にはその美しさの持続性では到底及ばない。
筆者の微かな記憶でも、この時期にはすでにそのようなファッション嗜好の高級傾向があったようで、いかにもビジネス時計という雰囲気と年寄り臭さを「KING & GRAND QUARTZ」に感じていた。しかし、現在のユーズド価格は海外市場が中心になっているため、中途半端にスイス製を真似た「Dolce」よりもカタログ価格で半分程度の「KING QUARTZ」の方が圧倒的に人気がある。
いつものように、SSバンドを革バンドに付け替えるにあたり、滅多に選ばない「黒」を装着してみた。正統派ビジネス風というところだが、仕事で電車に乗るわけでもなく、車移動の日常であれば車載クォーツ時計で十分に事足りるので、無駄といえば無駄な買い物だ。スマホアプリにも「時計」が標準でインストールされており、読み上げが可能な「日本標準時時報」もお気に入り登録しているが、ともに電波時計の時報と同期した正確な時刻情報が身近にあり、この日常が腕時計の魅力が世間から遠のいている理由かと思ってしまう。
日常使いでもう一つの SNOW文字盤仕様の「CITIZEN LEOPARD」は高振動の8振動自動巻だが、こちらもクォーツ並みの薄型軽量で装着感がよく似ている。ちなみにこれの現状の調整精度は日差+6秒で機械式では比較的高精度の部類なので、汎用のクォーツムーブメントよりも工業製品としての魅力は段違いに優れると思っている。
「TWIN QUARTZ」は、1970年代後半から1980年代にかけての、世界一の高精度初代ムーブメントで、その精度は現在ではGRAND SEIKOがこれを引き継いでおり、併行して電波時計もしくはGPS時計にその精度の使命を分担させることになる、これが初期のその「TWIN QUARTZ」ムーブメントということもこの歳になって魅力の一つとして筆者の目にとまったわけだ。
2009年の現役引退の頃に、クォーツ式 GRAND SEIKO を購入する予定でもあったが、その時点で30年以上大切に持ち続けてきた[SEIKO DOLCE]を見ていると、再び給料をはたいて新たな時計を購入する気力が失せたことと、衝動買いできるほどの余裕もないのが正直なところで、それで今日まで高級クォーツ時計を手にしてこなかったわけだ。しかし、この先の所持品整理の時期が到来して、家族のだれかが筆者の腕時計群を見つけた時に、一つぐらい聞いたことのある定番ものがあっても良いかと思う。
★ クォーツの精度意識に縁遠い「SEIKO PREMIER (プルミエ) 」
今年の初め頃に「記事」にした、ケース外径φ40.5mm、ラグ幅23.5mmで、手首廻りが20cmというかなりの大ぶりの汎用クォーツムーブメント 7N39 の腕時計だが、外装およびベルトの完成度は高級腕時計並みという海外製の[SEIKO PREMIER QUARTZ 2針 ]だ。
この商品名を「プルミエ」か、「プレミア」と読むのかは不明だが、国内では販売されていない機種なので大した問題ではないが、2針故にその精度を気にしたことがない。第一、時刻を合わせる時点で1分単位のインデックスがない。レディースをそのままメンズに拡大したような、掛け時計のようなものだ。
たまにこの腕時計をしてみるのは、バンドの弓カン部もバックル部も統一デザインのオリジナリティが感じられて、この大きさで完全フラットのサファイヤクリスタルガラスは圧巻で、「ザ・腕時計」という雰囲気がたまらないときがある。
特記すべきは、バンドのコマが2種類の組み合わせで、ハーフ幅(正確には0.538)のコマが上下の両側に挿入されているので、微妙な長さ調整が可能になる。筆者の場合はちょうど両方を使い切る組み合わせでうまく調整できている。
バックル部でもバンド幅は20.5mmで圧迫感が分散されて、W=111gをそれほど感じさせない気がしている。当然ながら、一般的な日本人の場合には腕周りの大きさでかなり人を選ぶデザインだと思う。それだから、保証なしの新品価格が定価の1/5以下だったと記憶している。
2026.10.10
★ KING QUARTZ 簡易整備
初めて高級腕時計「KING QUARTZ」の簡単な整備をしてみて、これまでの汎用のセイコー製ヴィンテージものとの違いに気付くところがある。
ケースのスレキズを軽く消す作業をしていたら、ステンレス鋼の硬度が一般的なものと違う。やや高硬度の素材を使用しているようで、キズが付きにくく鏡面反射の密度が高く美しい。裏蓋のパッキンは断面が変形しているので元の太さを推定するのが難しい。閉まり具合を確認しながら、0.6mmの汎用品で問題ないようだ。
ケース全般に言えることだが、外装の造形的切削加工および内側の段付切削加工の精度が高い。ベゼルの内側にもパッキン溝のテーパー段付加工が施されており、ガラスの圧入時にパッキンのズレが生じない工夫がされているのは、メンテナンスを前提とした品質の確保への配慮のような気がする。
つぎに風防ガラスだが、これは目視ではあまり気にならない非常に細かな線傷があり、光の反射具合では気になる無反射コーティング層のキズだ。交換を悩むところだが、ここはやはりいつものように風防ガラスは新品に交換することにした。準備したのはダブル曲面エッジカットのコーティングなしのタイプで、反射・屈折の制御で光の透過性をよくしたものだ。
オリジナルの完全フラットのQUARTZ用の風防ガラスはまだ比較的容易に入手が可能で、そのうちに注文しても良いかとも思うが、このダブル曲面エッジカットの方はそのうちに市場から消える気がするので、今回はまずこれで組立を完了しようと思う。
余談だが風防ガラスの加工をカメラや顕微鏡のレンズと比較すると、完全フラットでコーティングを施す手法はいわゆるフィルター用ガラス板の加工手法で、製造原価はレンズ用の曲面加工に比べると安価だが、1970年代後半以降はむしろより高級に映るような目新しさがあった気がする。このフラットタイプの風防ガラスは特にセイコー製が先駆けだ。現在の風防ガラスの主流はサファイヤガラスで完全フラットタイプが多く、コーティング処理まで施しているのはごく僅かなのは、コーティング層よりもサファイヤガラスの方が、はるかに硬度が高いためではないかと思っている。
文字盤とベゼルのインデックスおよびムーブメントは埃をブローする程度で問題なく、針の傷みもほとんどないのは購入前に確認したとおりで、電池は十分な電圧が確認できたが、今回の清掃時に新品と交換することにした。グリスアップ(裏蓋とリューズ)を済ませて、あとは風防ガラスが到着すれば準備してあった革バンドを装着して完成となる。
・・・つづく(もどる)

































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